明石班　「天然変性タンパク質の動的構造解析」

　天然状態で特定の立体構造をとらず、ターゲットと出会うことで一定の構造が形成され機能する天然変性タンパク質が知られるようになってきました。天然変性タンパク質は真核生物に多く、かつ細胞質よりも核内に多く存在することがこれまでに明らかになっています。当計画班では、真核生物の核内で機能する天然変性タンパク質について、そのターゲット認識機構の構造的な普遍性を構造生物学で解明することを目指します。これまでの構造生物学では、タンパク質‐タンパク質、タンパク質‐DNAなどの複合体について、単独で存在する時と複合体を形成した時のそれぞれの静的な立体構造を解析し、得られる「始点」と「終点」の硬い構造から機能メカニズムの考察を行なうのが一般的でした。当計画班では、天然変性タンパク質について単独の状態から複合体を形成するまでの各過程（単独時、遭遇複合体、中間体、結合状態）での動的構造解析を行うことが大きな特徴です。そして解析の結果、天然変性タンパク質の認識機構における普遍性を構造の観点から明らかにすることを目標とします。
　具体的な研究対象は、基本転写因子、転写因子、スプライシング関連因子、ヒストンタンパク質などの核内タンパク質です。核磁気共鳴（NMR）を用いた動的構造解析法を展開するとともに質量分析（MS）によるタンパク質の形状変化を解析します。また、NMR やMS による天然変性タンパク質の新たな動的構造解析のための方法論の開発も行います。