
第3回 領域会議が、平成24年5月30日(水)から6月1日(金)の三日間、北海道北広島市の北広島クラッセホテルで開催されました。すべての班員(計画班代表研究者と分担研究者および公募班の代表研究者)と班友の皆様に発表していただき(発表数 35)活発な討論がなされました。この領域研究も3年を経過し、興味深い結果が得られ始めています。また平成24年から公募班として加わられた研究者は、これまでの研究の紹介と今後の研究計画が発表されました。私の印象では、班員同士の相互理解が深まり、意見交換だけでなくより具体的な共同研究へ向けた話し合いや打ち合わせが、会期中あらゆる時間になされていたように思います。
この会議に参加された3人の若手研究者の方に、会議に参加された感想を書いていただきました。会議の写真とともに、ぜひご覧下さい。
大阪大学蛋白質研究所 肥後 順一






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〈 シンポジウムの感想 〉
5月30日から6月1日に北海道北広島市北広島クラッセホテルにて開催された第三回領域会議に参加しました。会議が開催されたホテルは自然に囲まれた環境で眺めもよく、リフレッシュしながら会議に望むことができました。会議では情報生物学、構造生物学、分子生物学の順番で研究発表が行われました。発表では特に天然変性蛋白質自体を統合的に理解するという視点で研究されている肥後先生や高野先生のMDシミュレーションや新井先生の天然変性蛋白質のデザインに関する内容に興味がわきました。また堀越先生のヒストンの化学修飾ネットワークを複雑ネットワーク構造として捉えた視点にも刺激を受けました。さらに会議全体を通して、それぞれ天然変性蛋白質の特性を知るという目的を異なるアプローチで研究し、それらの情報を統合的に理解する中で天然変性蛋白質の本質が見いだせるのだと感じました。ここで得られた感覚をこれからの研究の糧としてさらに努力していきたいと思います。ありがとうございました。
横浜市立大学 七種 和美
5月30日から6月1日の3日間にわたり、北海道の北広島クラッセホテルにて第3回領域会議が開催されました。客室やレストランなどホテルの上階からは北海道の壮大な景色を一望できる開放的な環境で、北海道の大地に沈む夕日には思わず見入ってしまいました。食事や露天付きの温泉も素晴らしく、3日間の会議を終始快適に過ごす事ができました。会議では天然変性タンパク質の最新の研究について44件の発表が、分子生物学・情報生物学・構造生物学といった分野の研究者の方々により行われました。池谷先生のin-cell NMRによる細胞内での構造解析の挑戦、古寺先生の高速AFMによる天然変性タンパク質の直接観察、深川先生のCENP-Tのリン酸化による外部動原体蛋白質との結合の制御機構など興味深い発表を挙げると切りがありません。それぞれの発表後の討論も大変盛り上がり、予定時間を超過してしまうこともあるほどでした。本領域もすでに後半に入っていますが、これからの進展が益々楽しみです。2日目に行われた懇親会では、美味しい食事とお酒を頂きながら様々なお話をすることができました。異なる分野の方々とこれほど存分にお話しできる機会は、私にとっても大変貴重な経験となりました。最後に、この領域会議を開催、運営し素晴らしい3日間にしてくださった、明石先生とスタッフの方々に心よりお礼申し上げます。
早稲田大学 先進理工学研究科 大貫 隼
第3回領域会議に参加して
初夏の北海道で行われた第3回領域会議に参加しました。この会議は、天然変性タンパク質というキーワードを中心に、構造科学、計算科学、分子生物学という異なる分野の研究者が一同に集うという画期的な集会です。テーマにこだわり分野は問わない、というスタンスは、難しいことも多いと思うけれど正しい方法だと思うので、たくさん勉強させていただこうという気持ちで臨みました。
まず、領域代表の佐藤先生による開会の挨拶が非常に印象的でした。佐藤先生は、この領域のことを「タンパク質結晶の核」に例えて、新しい分野成熟の核としての役割を、この領域が担うことができる、とお話されました。それを聞いたとき、私は今まさに、新分野開拓の瞬間に立ち会えているのだと、心が震えました。
3日間、食事の時間を除いてずっと講演尽くしでしたが、いずれの講演も、昨年よりぐっと踏み込んだ内容に昇華しており、興味深かったです。たとえば、安藤先生の研究チームによる、高速AFMを用いた動的構造解析。タンパク質一分子の天然変性領域を視覚的に捉えた動画に加え、天然変性タンパク質がアクチンフィラメントを束ねてゆく様子が映し出されたのは衝撃的でした。他にも、「天然変性」という状態の観察と、「天然変性であることの機能的意義」の追究をつなぐ発表や議論が多くあり、着実な「核形成」を感じました。また、新たに公募班に加わった先生方の発表も、それぞれが個性的で面白かったです。吉田先生がシャペロンタンパク質のお話をされた際に、シャペロンタンパク質と天然変性タンパク質の共進化について議論が炎上したのは新鮮でした。構造や機能の話に加え、進化の話も加わってきて、天然変性タンパク質という研究テーマの意義がますます深まり、生命の本質的な理解へと成熟してゆくのではないかという期待さえも沸き起こりました。
会議全般を通して、昨年よりずっと和気あいあいとした雰囲気で、知識や知見の集約から成る「核」を支える、人脈の「核」の形成につながっていることも感じました。このような、専門分野の垣根を超えた萌芽的研究の刺激的な会議に参加できたことを幸せに思います。参加させていただき、どうもありがとうございました。今後のシンポジウムや会議も楽しみです。
東京工業大学大学院 福田 牧葉