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第34回日本分子生物学会年会ワークショップ 「Functions of the intrinsically disordered regions found in various proteins 」開催のご報告。


2011年12月13日~16日に、パシフィコ横浜(横浜市)に於いて第34回日本分子生物学会年会が開催されました。その2日目に、当領域の柴田(理研)、石野(九大)が世話人となって、ワークショップ "「Functions of the intrinsically disordered regions found in various proteins 」を行いましたので、その報告をします。ワークショップの内容は以下のとおりです。

ワークショップの感想

Organizers : Yoshizumi Ishino(Kyushu Univ.),Takehiko Shibata(RIKEN)
・ Introduction
Yoshizumi Ishino (Kyushu Univ.)
・ Database for the research of intrinsically disordered proteins
Motonori Ota(Grad. Sch. Inf. Sci., Nagoya. Univ.)
・ Towards the structural characterization of intrinsically disordered proteins by SAXS and MD simulation
Mamoru Sato(Grad. of Nanobiosci. Yokohama City Univ.)
・ NMR Studies on Chromatin-related Proteins
Yoshifumi Nishimura(Grad. School Bionanoscience, Yokohama City Univ.)
・ Single-molecule time-stamp measurements of the dynamics of intrinsically disordered proteins
Yasushi Sako(Cellular Informatics Lab., RIKEN, ASI)
・ A unique centromeric chromatin structure in vertebrate cells
Tatsuo Fukagawa(Dep. Mol. Genet., Natl. Inst. Genet.)
・ Local folding of the N-terminal domain of RecA upon protein-protein / protein-DNA interactions andits role
Tsutomu Mikawa1,Yutaka Ito2,Takehiko Shibata1,3(1RIKEN ASI,2Dept. Chem., Tokyo Metropolitan Univ.,3Dept. Supramol. Biol., Yokohama City Univ.)
・ Conclusion
Takehiko Shibata(RIKEN)

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〈 ワークショップの感想 〉

天然変性タンパク質の研究は、構造生物学領域から生まれてきたもので、構造、情報生物学領域では、その存在と意義について広く認識されていますが、遺伝子の解析が中心の遺伝学や、遺伝子産物の機能解析を中心に行う細胞生物学の領域では、天然変性タンパク質や天然変性領域を有するタンパク質についての情報は未だ広く普及していません。従って、機能解析の研究者が中心の分子生物学会において、天然変性タンパク質の研究を紹介することによって、これからの分子生物学が目指す方向として、天然変性タンパク質の重要性を認識していただくことを目的として、当ワークショップを企画しました。昨今の分子生物学会は巨大化しており、年会には膨大な量の発表が用意されますので、4日間とも早朝から夜遅くまで密にプログラムが組まれて進行しました。参加者は期間中多忙を極めながら、多数の企画の中から参加するものを決めて、会場から会場へと動き回りますが、天然変性タンパク質をタイトルとしたワークショップは、当学会では初めての開催でしたので、期待どおり多数の来聴者がありました。
 本ワークショップの趣旨は、天然変性タンパク質が生理的にどのような意味を持ち、どのような機構でそのタンパク質の有する機能発現に関わるのかという、重要かつ極めて興味深いテーマについて啓蒙する役目を担いたいということで、当領域で活発に研究を推進している六名の研究者に、それぞれ情報生物学、構造生物学、機能生物学の立場から最先端研究状況を紹介していただきました。まず、天然変性タンパク質が生物の中でどのくらい存在するのか、どの天然変性領域をどのように予想したらいいのかなど、イントロダクションを含めて情報生物学的な講演を太田先生(名大)にお願いし、太田グループが本領域研究の中で立ち上げられた天然変性タンパク質のデータベース IDEAL について詳しく紹介いただきました。次に、天然変性タンパク質の構造解析法を紹介するために、佐藤先生(横浜市大)、西村先生(横浜市大)、佐甲先生(理研)にそれぞれ、分子動力学と組み合わせたX線小角散乱法、 NMRを用いた方法、単一色素対の蛍光共鳴エネルギー移動を利用した解析法について、具体的な解析例を紹介しながらご講演いただきました。その後で、深川先生(遺伝研)、美川先生(理研)に、それぞれ構造情報を利用しながら機能解析を中心に進める研究例を紹介いただいました。2時間に6講題でしたので、それぞれの話題に対して十分な時間が取れたとは言えませんでしたが、天然変性タンパク質について勉強してみたい、また、どのように研究を進めたらいいのか知りたいという来聴者の方々には、要望に応えられる情報が提供できたのではないかと思います。今年会は、講演は全て英語で行うこと、また進行もできるかぎり英語が望ましいという運営上の方針がありましたので、本ワークショップは、全て英語を使用して進めました。新しい領域を勉強したいと思って来られた、特にまだ研究経験の浅い学生にとっては、講演内容を完全に理解するには少々ハードルが高い感があったかと思いますが、議論は活発に行われ、国内学会においてこのような講演を英語で聴く機会として大変貴重なものであったと思います。ワークショップの最後で、どういう性質を持てば天然変性タンパク質と呼んでいいのかという、「天然変性タンパク質の定義」についての質問が出て、しばし議論が続きました。このことは、本領域内においてもしばしば議論になってきたことです。それぞれの先生が種々のご意見をお持ちですが、大きさも含めて、天然変性具体的に記述できるタンパク質としての化学的性質の定義としては未だ定まっておらず、これからの構造と機能の研究データの蓄積によって、天然変性タンパク質と呼ぶための必要条件が定まっていくのではないかと私は思っています。時間が無かったことと、難しい問題を英語で議論したこともあって、この最後の議論が多くの聴衆には正確に伝わりにくかったかもしれませんが、逆に言えば、天然変性タンパク質研究が、正にまだまだ未開の領域であり、研究の進展によって新たなことが分かってくれば、自ずと定義も定まっていくということが伝わったとすれば、オーガナイザーとして大変幸いです。天然変性タンパク質研究領域を切り開いて行くことこそ、本学術領域としての使命です。これからも益々頑張って行きましょう。


ワークショップ オーガナイザー 九州大学 石野 良純

分子生物学会ワークショップに参加して

2011年12月に開催された第34回日本分子生物学会年会において、当領域の石野良純、柴田武彦両氏のオーガナイズによるワークショップ "Functions of the intrinsically disordered regions found in various proteins" が開かれました。佐藤衛領域代表を始め、領域の関係者6名が発表を行い、私もその中に加えていただきましたので、当日の感想を記します。多数の聴衆を集めて活発な議論が行われました。
タンパク質天然変性領域の生理的機能が次々に明らかになっていますが、本ワークショップにおいても、西村善文氏、深川竜郎氏、美川努氏といった方々から、DNA結合タンパク質やクロマチンの機能・構造の維持おける天然変性領域の分子間相互作用の重要性が、明確に示されました。分子間相互作用に伴う天然変性領域のdisorderedからorderedへの構造転移は、前後の平均構造の差がCDスペクトル等から明らかな場合もあり、結合状態の原子座標も決定されてきています。天然変性領域に関する情報をデータベース化する作業は、太田元規氏のグループによって行われています。
多くの参加者の現在の関心は、天然変性領域を検出することと、相互作用相手との結合構造を知ることであるように見受けられました。私にとって天然変性領域の面白さは、柔軟な分子認識機能です。その仕組みを理解するには、変性状態あるいは構造転移過程の構造分布とダイナミクスを明らかにすることが必要でしょう。佐藤領域代表のグループが開発しているMD-SAXSは、構造分布を推定する有力な方法になりそうです。計算科学が発展すれば、構造転移のダイナミクスも見えてくるでしょう。我々も微力ではありますが、1分子計測法によって天然変性領域の構造ダイナミクス研究に寄与したいと思っています。いつの日か、構造ダイナミクスも重要な情報のひとつとして太田氏のデータベースに載せられる日が来るかもしれません。


理化学研究所 佐甲 靖志























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