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結晶化ロボット・X線装置

結晶化ロボット・X線装置

タンパク質の構造を決定する手法はいくつかありますが、X線結晶構造解析が最も強力な手段です。

しかしこのためにはそのタンパク質の結晶を作成しなければなりません。結晶を作成するためにはタンパク質の精製や結晶化条件の検討など大変な苦労をしなければなりません。

タンパク質の精製については省きますが、結晶化に関して、どれだけの条件を試せばよいでしょう?

例えば、世の中で発売されている代表的な結晶化のスクリーンキット(ハンプトン社)だけで400種類以上あります。さらに他のメーカーのものや、自作のものを加えればすぐに条件が増えることは容易に想像できるでしょう。
これをすべて手作業で行うのは大変なことです(しかしちょっと前まで、いや今でも実際に手作業でやっていますが)。
結晶化ロボット
鶴見キャンパスには右の写真のような結晶化ロボット(Hydra II)が設置されています。ロボットは文句も言わず淡々と結晶化ドロップを作っていきます。ロボットを使って幅広く条件検討を行い、結晶が析出したところをさらに細かく検討します。
さて結晶ができたら(写真A)どうすればよいのでしょうか?
結晶化の実験


まずは結晶にX線をあててその結晶の“質”を判定しなければいけません。蛋白質の結晶は一般的にもろく、X線をあてていると損傷を受けます。そこでX線損傷を防ぐために結晶を凍らす(液体窒素温度-180℃程度)ことが行われます(写真B)。

次に実際にX線を照射します。すると写真Cのような斑点がみられます。結晶の良し悪しは様々な基準で判断されますが、一つの基準は分解能です。簡単にいうとどこまでこの回折点がみられるか、ということです。端まで見えるほどよいと考えてください。3Å付近まで見られれば十分構造解析できるでしょう。むろんさらに回折するような結晶であればより詳細な構造が得られます。

このような回折点の強度(黒化度)を多数測定します。この強度は結晶中の蛋白質の立体構造(構造および結晶中での並び方)を反映したものなので、ある計算手法で強度から構造に変換できます。正確に言うと直接蛋白質の構造が得られるわけではなく実際に得られるものは電子密度です。ここにモデルを組み立てていくことになります(写真D)。
x線発生装置
 鶴見キャンパスには計4台のX線発生装置(理学 Ultrax18 3台, FR-D 1台)が設置されています(右写真)。

また単結晶用のX線回折計(理学 Raxis-IV++)が6台と、結晶を超低温に冷やすクライオ装置もX線回折計ごとに設置(つまり6台)されています。

もちろん大型放射光施設(PF, Spring8)でのデータ測定も行っています。
x線溶液散乱システム
一方、左写真のようなX線溶液散乱システムも1台設置されています。

X線溶液散乱は原子レベルでの構造解析はできませんが、溶液のまま測定できるという大きな長所があります。このデータより分子の形状や溶液中での分子量などを見積もることができます。
1つの専攻の中でこれほど装置が充実しているところはそうそうありません。
皆さんもこの装置を大いに利用して、一緒に研究しませんか?

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