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4.タンパク質のシミュレーション最前線:スパコンを使ってみよう!(6月8日)

2018.06.08 〜 2018.06.08
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タンパク質のシミュレーション最前線:スパコンを使ってみよう

タンパク質は、われわれの体を作る基本的な生体分子です。タンパク質にはそれぞれに与えられた役割があり、複数のタンパク質が各々の役割を協調的・連鎖的に果たすことで、生体内の分子イベントが調整され、生命活動が維持されます。従って、あるタンパク質が不調になり、その役割を果たせなくなると、関係する分子イベントが異常なものになってしまい、病気につながります。病気を効果的に治療するには、原因となるタンパク質をよく知ることが必要になってきます。タンパク質の役割は、その立体構造と構造変化から理解することができます。本シリーズで体験できるものも含め、様々な実験手法が開発・応用され、多くのタンパク質の正体が明らかにされています。
 
コンピュータを使って、タンパク質を解析するインシリコ研究も盛んに行われています。コンピュータ上で、タンパク質が実際に役割を果たす状況を再現し、構造変化の解析からタンパク質が役割を果たすメカニズムを理解します。また、薬の候補となる小さな分子をタンパク質のポケットへ結合させて、タンパク質が薬を認識するかを試すこともできます。本プログラムでは,まず、コンピュータ上でタンパク質の構造変化を観察していただき、インシリコ研究がどんなものか、体験していただきます。また、実際にスパコンを使った、分子動力学シミュレーションの実行や、薬をタンパク質へドッキングさせるシミュレーションを通して、インシリコ研究の最前線を体験していただきます。
 
図1:スーパーコンピュータCray XC50外観 図1:スーパーコンピュータCray XC50外観

スーパーコンピュータCray XC50を見てみよう

スーパーコンピュータ、または、スパコンと検索すると、京コンピュータのような、扉付きのラックがひたすら並んでいる光景がでてきます。扉を開けると、中はどうなっているのでしょうか。横浜市大には、スーパーコンピュータCray XC50が設置されています。扉の中や、スパコンの裏も見てみましょう。
 

タンパク質が動く様子を見てみよう

肌の保湿には、肌表面の細胞に水がめぐることが重要です。アクアポリンは、細胞膜に存在しており、水を通す役割を担うタンパク質です。肌の表面にもアクアポリンがあり、水を透過させることで、肌の保湿に一役買っています。コンピュータ上で、アクアポリンを膜に埋め、水分子で囲まれた状況を再現しました。スパコンを使って、生体分子シミュレーションを実行し、アクアポリンが働く様子を見てみましょう。

さて、ザルを想像してみましょう。ザルの網目よりも小さなものが、ザルを透過することができます。温泉には、水分子より小さな水素イオンが含まれています。もし、アクアポリンがザルだとすると、水分子より小さな水素イオンは透過してしまいます。肌から水素イオンが流れ込むと大変なことになりそうです。しかし、実際は、気持ちよく入浴できるだけで、大変なことにはなりません。アクアポリンの立体構造から考察してみましょう。
 
図2:たくさんの水分子と、膜に埋まったアクアポリン 図2:たくさんの水分子と、膜に埋まったアクアポリン

薬をタンパク質へ結合させてみよう

毎年、インフルエンザウィルスは我々に襲い掛かります。ノイラミニダーゼはインフルエンザウィルス表面に存在し、宿主細胞内で増殖したウィルスが細胞膜から出ていく際に重要な役割を果たします。ノイラミニダーゼを阻害することができれば、ウィルスは、感染した細胞から出られないため、増殖を抑えることができます。ノイラミニダーゼを阻害する薬が、タミフルです。タミフルが、なぜ、ノイラミニダーゼと結合できるのか、立体構造や、薬とタンパク質の認識様式から考えてみましょう。実際にスパコンを使って、生体分子シミュレーションを実行し、動いている様子も見てみましょう。

薬は、パズルのように、タンパク質の形や、薬とタンパク質間の認識様式を考えながらデザインされます。ドッキングシミュレーションを使うと、デザインした薬をタンパク質へ結合させることができます。タミフルをノイラミニダーゼへ結合させてみましょう。結合の強さと、タミフルとノイラミニダーゼ間の認識様式を観察し、タミフルが、いかに、合理的にデザインされているか体感しましょう。
 
図3:ノイラミニダーゼと治療薬タミフル 図3:ノイラミニダーゼと治療薬タミフル



平成31年度 一歩進んだ生命科学の実験教室
 
 
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